奨学金は自己破産・債務整理・死亡してもチャラにならない
奨学金は、自己破産してもチャラにならない―。この事実はあまり知られていません。完全民間の業者ではなく、日本学生支援機構は公的な業者のため、差し押さえなどの手段も、役所のように使えるわけです。
本人が死亡すると、家族が返済する
普通のキャッシングの場合、借りていた本人が死亡した場合、借金はなくなります。連帯保証人になっていたら別ですが、なっていなければ、誰も返済する必要はないのです。
(本人が一番ご愁傷様ですが、業者・ブランド・銀行もご愁傷様ということです)
しかし、奨学金の場合はそうではないんですね。もし返済の途中で借金していた本人(元学生)が亡くなってしまった場合、遺族が完済する義務があるのです。
遺族が突然一括返済を要求された事例
たとえば北海道釧路市で起きた事例。年金生活を送る夫婦のもとに、約250万円を一括返済するように、日本学生支援機構から請求が来ました。この夫婦のお子さんは10年以上前に病死していたのですが、その返済の続きを要求されたわけです。
彼の奨学金は元金で100万円程度しか残っていなかったのですが、10年間で「150万円以上」という、高額の延滞金が追加されていたのです。
この時の延滞利率は「実質年率10%」。銀行カードローンの一番高い金利が大体「14.5%」なので、それに近い金利です。その状態で、預けっぱなしだったということですね。
本来は死亡免除規定があるが…
実は、日本学生支援機構の奨学金には本来「死亡免除規定」というものがあります。これは「本人が死んだら返済しなくていい」というもの。やはりこういうルールは当然あるんですね。
しかし、これには条件があって「手続きが必要」なのです。さらに「延滞しているとできない」というルールもあります。この夫婦のお子さんの場合、死亡免除の手続きをしておらず、しかも延滞が続いていたために、この一括返済を免除してもらうことができませんでした。
夫婦は日本学生支援機構に連絡しなかったのか?
実はお子さんがなくなった時、このご夫婦は日本学生支援機構に電話連絡しています。しかし、組織が変わった直後(独立行政法人に変わった)ということで、以前の電話番号がつながらなかったのです。
また、日本学生支援機構の方からも、この夫婦への連絡はありませんでした。そして、10年間ほったらかしの状態で、突然「一括返済の連絡」だけが来たのです。
現在では「保証人なし」でも借入可能
現在の奨学金は「保証人なし」でも借りられるようになっています。「機関保証」というシステムで、日本学生支援機構などの組織自体が保証人になってくれるというシステムです。
ただ、当然手数料がかかります。それだけ彼らがリスクを負っているということですから。その分の手数料として、毎月の奨学金から「保証料」が天引きされます。
そして、この機関保証制度は、一度選択したら解除できません。つまり、ずっと奨学金から天引きされ続けるということです。ということで、必ずしも便利な制度とは言いがたくなっています。
奨学金と自己破産・債務整理の関係
奨学金は自己破産しても返済しないといけないというのは「連帯保証人」をつけていた場合です。つまり、上に書いた「機関保証」を利用する場合は、自己破産をしたならチャラになります。
(その分、上にも書いた通り「毎月奨学金を天引きされる」のですが)
奨学金の保証は「人的保証」と「機関保証」のどちらかしかないので、「人的保証」を選んだ場合、その保証人が自然と連帯保証人になる…ということです。
つまり保証人をつけて奨学金を借りたなら、
- 自己破産してもチャラにならない
- 債務整理しても、返済義務は続く
ということです。本人はOKですが、家族や親戚などの保証人になった人が、代わりに返済するということですね(つまり、本人は問題ないわけです)。
そう考えると、奨学金の連帯保証をすることも、少々考えてしまうかも知れません。さすがに自分の家族だったら大抵は大丈夫だと思いますが、死亡した時などの手続きは注意したいものです。
まとめ ~奨学金はキャッシングと同じ~
奨学金は、金利面では非常に安く、完全に消費者金融や銀行キャッシングなどの借り入れと同じにするのは、よくありません。金利でいうなら、これらの5分の1以下でしょう。
しかし、やはりお金を借りている以上、それはカードローンなどと同じ「借金」なのです。しかも400万円など、数百万円単位で借りるのが普通です。これだけ大きい借金を、全然収入がない学生がしている…という現実を、よく直視するべきでしょう。
それだけのお金を払って大学に通う意味が、今の日本であるのか。ということを、よく自問自答するべきです。