消費者金融の始まりと歴史 ~呼び名の由来と変遷のまとめ~
消費者金融の始まりと歴史―。これは1929年です。日本昼間銀行という、少々のどかな名前の銀行が、個人に対する少額融資を始めたのがきっかけです。
当時の融資条件は厳しかった
日本昼間銀行の融資条件は下のようになっていました。
- 25歳以上
- 既婚者
- 保証人が2人いる
という条件です。現代のキャッシング審査と比較すると、かなり厳しいのがわかるでしょう。
1930年、三井銀行も個人金融を開始
さらに翌年、三井住友銀行の前身である「三井銀行」も、個人向けの金融を始めています。しかし、これは借入条件が「三井グループの社員」という風に限定されており、「少し進化した福利厚生」のような面がありました。
現代の企業でも「社内貸付制度」というものがあり、給料の前借りが進化したような融資制度があります。これを最初に制度化したのが、三井グループだと言えるでしょう。
(もちろん、制度化されていなかっただけで、どの町工場などでも「親父さん、ちょいと給料を前借りさせてくれんか」みたいなことは、あったと思うのですが。というか町工場の方が多かったでしょう)
1956年、消費者金融が本格化
現代の消費者金融に近い形の会社。これが登場したのは1956年です。今でも大手である日本信販の「チェーン・クレジット」というサービスが、この年に開始されました。
やがて、三洋商事・関西金融なども参加し、後に「サラ金(サラリーマン金融)」と呼ばれるスタイルが確立しました。
(ちなみに、三洋商事と関西金融は、どちらも現在のSMBCコンシューマーファイナンス=プロミスになっています)
1967年、クレジットカードのキャッシング開始
60年代の後半に入ると、クレジットカードの世界でもキャッシング機能が導入されます。最初に導入したのは日本ダイナースクラブで、その後、他のクレジット会社にも広がっていきました。
ダイナースカードと言えば、現在では「33才以上、勤続10年以上」などの厳しい条件をクリアしなければ入会できない、かなりハイステータスなクレジットカードとして知られています。
しかし、消費者金融の世界に最初に参入したという点では、日本で使えるクレジットカードの中では、「最初に身近になった」カードの1つと言えます。(もっとも、ダイナース自体は母体がアメリカで、日本企業ではないですが)
1972年、銀行カードローンが始まる
そして、1972年、現在でも馴染み深い「銀行カードローン」が登場します。当時のネーミングは面白く「市民ローン」「庶民ローン」などと呼ばれていました。
(「庶民ローン」と聞いて、スラムダンクの桜木花道の「庶民シュート」を思い出す人も、いるかも知れません)
1977年、アメリカの消費者金融も参入
ダイナースの時点で、アメリカ資本自体は入ってきていましたが、バリバリの「消費者金融」が参入したのは、1977年からです。
参入した企業は「アプコ・ファイナンシャル・サービス」で、これに続いて他の外資系企業も続々と参入してきました。
90年代には、日本の「お家芸」に
最初こそ海外から入ってきた消費者金融というシステムですが、90年代にはすでに「日本のお家芸」になっていました。特に当時業界のトップ争いをしていた武富士などは世界でも注目されており、創業者は「金融の帝王」として、海外の関係者からも一目置かれていました。
このように「輸入したビジネスモデルを、本家以上に発展させる」というのは、日本人の典型的なパターンですが、消費者金融という世界でも、それが存分に発揮されたわけです。
消費者金融の呼び名の変化について
こうした歴史とともに、消費者金融という業種がどのような呼び名で変化していったか、その変遷をまとめましょう。
- 1960年代…団地金融、勤人信用貸
- 1970年代…サラ金(サラリーマン金融)、街金
- 1980年代…消費者金融
- 2010年代…カードローン(?)
このように変遷しています。「消費者金融」以降は新しい呼び名が固定されていませんが、だんだん「カードローン」と呼ばれる割合は増えてきました。
プロミス・アコム・SMBCモビットなどの大手の消費者金融も、すべてメガバンクグループの傘下に入っていますし、レイクは完全に銀行カードローンになっています。
プロミスの正式名称も「SMBCコンシューマーファイナンス」ということで、今後は「消費者金融」の英語訳である「コンシューマーファイナンス」が使われていくかも知れません。
(四文字くらいで訳せるうまい言葉が見つかったら、「女子会」のように定着すると思いますけどね)
そもそも消費者金融とはどういう意味か?
最後に消費者金融の意味を書くと「消費者に対する金融」ということ。つまり、別にプロミス・アコムのような一般の業者だけを言うわけではないんですね。三菱UFJ銀行・三井住友銀行などのメガバンクであっても、企業でなく消費者に対して融資しているのであれば、それは「消費者金融」というのです。
ただ、「消費者金融」という言葉自体のイメージが悪くなっているので、銀行キャッシングはこれを使われることを嫌っているわけですが。